やる気の維持

やる気の維持

やる気はどこから来るのでしょうか?

精神論的に語る方も居ますし、脳科学の面から語る方もします。

精神論的なことは他のWebサイトにお任せするとして、このWebサイトでは私も知らないことだらけで恐縮なのですが、脳科学の面から考えていきます。

脳科学の研究でどうやらやる気は「淡蒼球(たんそうきゅう)」や「線条体(せんじょうたい)」と呼ばれる脳部位が大きく関わっていることがわかってきました。

“報酬”の量を予測し”やる気”につなげる脳の仕組みを発見

このレポートの概要は以下の通りです。
『私たちの行動や運動における”やる気”は、予測されうる報酬の量により、強く影響を受けます。しかし、これまでの研究では、脳のどの部位が報酬の量を予測して、行動・運動に結びつけるのか、よく分かっていませんでした。自然科学研究機構生理学研究所の橘 吉寿(タチバナ・ヨシヒサ)助教は、米国NIH(国立衛生研究所)の彦坂 興秀(ヒコサカ・オキヒデ)博士と共同で、サルを用いた研究によって、大脳基底核の一部である腹側淡蒼球と呼ばれる部位が、この過程に強く関わることを明らかにしました。米国神経科学誌NEURON(11月21日号電子版)に掲載されます。

 

研究グループは、情動と運動を結びつける神経回路を持つとされる脳の大脳基底核の一部である腹側淡蒼球に注目。サルに、特定の合図のあと、モニター画面上である方向に目を動かすように覚えさせ、うまくできたらジュースをもらえるようにトレーニングし、そのときの腹側淡蒼球の神経活動を記録しました。腹側淡蒼球における神経細胞の多くが、合図をうけてからジュースをもらえるまで、持続的に活動し続けることを見つけました。予測される報酬(ジュースの量)が大きければ大きいほど、目を動かすスピード(運動)は速く、腹側淡蒼球の神経活動も大きくなりました。この神経細胞こそ、得られる”報酬”を予測して、”やる気”をコントロールする脳の仕組みの一部であると考えられます。

 

橘助教は「腹側淡蒼球を薬物で一時的に働かなくすると、行動の機敏さが(”やる気”の差を生み出す)報酬量の違いによって影響を受けなくなりました。これらの結果から、腹側淡蒼球が、”報酬”を予測し、”やる気”を制御する脳部位の一つであることが分かりました。これによって、報酬に基づく学習プロセスの理解が進むことが期待されます」と話しています。』

 

また、「線条体」と呼ばれる脳部位も大きく関わっていることがわかってきました。

脳内にある、やる気のスイッチを発見-意欲障害の治療法探索が可能に-

『このたび、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の田中謙二准教授、三村將教授、生理学教室の岡野栄之教授、北海道大学大学院医学研究科の渡辺雅彦教授、防衛医科大学校の太田宏之助教、大学共同利用機関法人自然科学研究機構 生理学研究所の佐野裕美助教らの共同研究グループは、マウスを用いた実験で意欲障害の原因となる脳内の部位を特定しました。

意欲障害は、認知症や脳血管障害など、多くの神経疾患で見られる病態ですが、その原因については、脳が広範囲に障害を受けたときに起こるということ以外分かっていませんでした。

研究グループは、大脳基底核と呼ばれる脳領域の限られた細胞集団が障害を受けるだけで、意欲が障害されること、この細胞集団が健康でないと意欲を維持できないことを発見しました。

今後は、この意欲障害モデル動物を用いて、これまで治療法が全く分かっていなかった脳損傷後の意欲障害における治療法を探索することが可能になります。

本研究成果は、2017 年 2 月 1 日に総合科学雑誌である Nature Communications に掲載されました。』

淡蒼球

淡蒼球とは、大脳基底核の主要な構成要素のひとつで、外節、内節とに区別されます。
どちらも共にGABA(ギャバ、用語集参照)作動、運動機能への関与が最もよく知られています。
また、意思決定など、その他の神経過程にも関わると考えられています。

この淡蒼球が「報酬・リターン」の量を予測し「やる気」につなげる機能を司っているもしくは深く関与していると考えられます。

淡蒼球は脳の一部なので自分で意図的に動作させることができません。
なので、「やる気を出せ!」と念じても何も起こりません。

淡蒼球を活動させるには、上の実験のように「ジュースをもらえる」という報酬に対し活動を促すことができると考えられます。

上の実験では報酬量に対する労力・危険・難易度に関しては言及されていません。
なので、簡単で危険がない状態でなら淡蒼球を簡単に働かせることができそうです。
真の前に報酬をチラつかせて、取りに来たら上げるよと分からせれば良いのですから。

しかし、現実はそんな旨い話はありません。
大きな報酬・リターンを得るには、労力・危険・難易度・その他の条件が必要になります。

 

線条体

線条体とは、大脳基底核の主要な構成要素のひとつで、背側線条体と腹側線条体に区分されます。
運動機能への関与が最もよく知られています。
また、意思決定(依存や快楽)などその他の神経過程にも関わると考えられています。

線条体が機能低下により対人恐怖症、社会恐怖症に成るケースが多いと言われています。
(例:人前に出ると震えたり、手の平に汗をかいたり、顔の筋肉が硬直したりする)

運動系機能を司どる被殻(ひかく)、精神系機能を司る尾状核(びじょうかく)から構成されていて背側線条体とも呼ばれています。
線条体(被殻と尾状核)は、大脳辺縁系と大脳新皮質からそれぞれ興奮性入力を受けることが知られています。

研究の結果、線条体の腹外側の障害で、かつ、その領域のわずか 17%の細胞死によって意欲障害が起こることが分かりました。
研究グループは、神経毒とD2-MSN の機能抑制と破壊という方法によっても、腹外側線条体の D2-MSN が意欲行動に必須であることを見出しました。

 

淡蒼球と線条体の活動と条件

「毎日走ったらすぐに体重が落ちてスマートになれるよ」
これは真実ですが、どれだけ走ったらスマートになれるかの条件が出ていません。
どれだけ大変なのか皆さんはかなりはっきりわかっているので、皆さんの淡蒼球や線条体はこんな言葉には見向きもしません。
できっこないと判断しているので。

「この食品を摂ったタレントが3月で15㎏のダイエットに成功したらしいよ!」
きっとこれも真実でしょう。
しかし、この食品を摂っただけで、「他になんの努力もしていない」とは書いてありません。
本人も番組もなにも言いません。
視聴者の中には希望的な憶測で「食べたら痩せられる。15㎏は大げさでも少しは痩せられる。それも食べるだけで」と解釈してしまいます。
また、「簡単なことで大きな報酬・リターンを得られるのなら、だまされても損は小さい」との判断もできるのでしょう。
その結果、淡蒼球や線条体が活動して「試してみよう」となります。

淡蒼球や線条体が「やる気」につながる機能の一端を担っていますが、まだまだ不明な部分が多いのも事実です。

 

やる気を出させるには

やる気スイッチ! やる気は刺激が必要!」の回で紹介したとおり、やる気を出させるには上の条件を軽くして、まずはやる気を出させるのがコツです。

 

やる気を維持するには

ではやる気を維持するのはどうしたら良いのでしょうか?
やる気を維持するには、「習慣化」を目指すことになります。

脳はすぐに慣れてしまいます。
慣れには「飽きる」慣れと、「習慣化」の慣れがあります。
この習慣化の慣れまで持っていうことが大切なのです。

1回のやる気だけなら

1回だけのやる気なら脳をだまし上手くできるかもしれません。
小さい子を1回だけ言葉巧みに誘導して、嫌なことをなんとかやらせることに似ています。

継続するやる気は

三日坊主をクリアし、3週間をクリアするとだんだん習慣化されてきます。
3か月継続出来たら、ほぼ習慣化できたと考えても良いと思います。

習慣化できると、脳をだますことなく行動に移せるようになります。

では、3週間、3か月をどのようにやる気を維持させるかが問題になります。

淡蒼球や線条体には4つの方法で活性化へ影響を及ぼせると考えている研究者が居ます。

  1. 運動野からのアプローチ
  2. 海馬からのアプローチ
  3. デグメンタからのアプローチ
  4. 前頭葉からのアプローチ

の4つです。

運動野からのアプローチ

これはとにかく体を動かして、やる気スイッチを入れちゃいましょうの手法です。
簡単なクリア条件で「やる気」が無くてもやる気がでるように脳をだます手法です。

海馬からのアプローチ

海馬からのアプローチは、マンネリ化した慣れをいつもと違うことをすることで関心を高める手法です。
例えば、ウォーキングコースを変えてみる。
友達を誘ってウォーキングする
音楽を聴きながらウォーキングする
など、少しでも変化を付けて楽しむ手法です。

デグメンタからのアプローチ

デグメンタからのアプローチは、本来の報酬・リターンと異なる「ごほうび」を得ることによってやる気を維持する手法です。
「自分ご褒美」は良く有りますよね。
新しいウェアや靴を新調することなどは、海馬からのアプローチにもつながりやる気がアップします。

前頭葉からのアプローチ

前頭葉からのアプローチは、思い込みを行うことによって演じ切る手法です。
私は「良い女」。だから自己管理もしっかりできていてウォーキングももちろん継続できます。
できる女なのだから、出来て当たり前と思いこむ手法です。

狙いは「習慣化」

これら4つの手法を組み合わせて、狙うのは習慣化です。

習慣化は面倒なこともマンネリ化して慣れさせてしまいます。

仕事や家事などで「えっ?こんな面倒なこと毎回やってたの? こうやれば、ほら、簡単に」ってこと経験ありますよね。
でも、毎日やってたから、それが当たり前になってそんなに苦になってなかったりします。
それどころか、簡単にやった場合「ここが雑になって良くない!」などと明らかに面倒な方を擁護したりするときもあります。

習慣化というのはそれほど強力なものなのです。

 

やる気の維持と習慣化

やる気の維持の肝は「習慣化」です。

無意識に行えるようになるのがベストです。

そこにたどり着くまでにとにかく、脳の飽きを言いくるめてしまいましょう。

「やる気スイッチ」は皆さんの脳の中にある淡蒼球や線条体が持っています。
淡蒼球や線条体に直接働きかけることはできませんが、4つのアプローチで働きかけを行うます。

うまく働きかけることで「習慣化」を手に入れ、報酬・リターンを手にすることができます。

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